年の瀬に

というわけで2012年もあと1週間ちょい。去年と同じように、今年読んだ本を振り返ってみるだけの記事だけども、しばしおつきあいのほどを。


まず読書冊数は今日までで157冊の模様。去年の年末に「とりあえず150は割りたくない」と言っていたので、まぁ目標は達成できたかな。ちょこちょこ記入漏れもあるし、論文教科書類等あくまで勉強研究のために読んだ本は入れてないから、意外とこんなもん。

巨年末に立てた目標を振り返ると、ジャンルとしては確かにSFが4冊…あと『八十日間世界一周』とか混じってる。これはまぁ世界文学枠で。そういえば『ヴェニスの商人』を読んだなぁ。あれはユダヤ関連を調べている時(3月くらい?)に読んだんだっけ。結局丸山真男は読まず、和辻哲郎も『古寺巡礼』をざっと読んだだけだったね。

来年は150冊維持はまぁ当然として、もう少し新刊を追いかけていきたい。『割と書評』も新刊の新書を中心に1カ月に2冊くらいのペースで書けるといいと思っている。
読書ジャンルとしてはあまり今までと大きく変えるつもりはないかなーという感じ。新書、歴史、科学、経済などを節操無く。


さて、今年のマイベストは…



『100のモノが語る世界の歴史』シリーズ(筑摩選書) ※




いやホントは1〜3巻構成なんだけども、原書はもともと1冊ですごい分厚くてもっと安い(涙)らしいんでいいでしょってことでここはひとつ。
大英博物館の展示品の中から100個選び、それにまつわるエピソード等で歴史を語っていこうという本。
文字に残った歴史は勝者の、あるいは文字を持つ者だけの歴史になってしまうし、書き換えもできる。だけどモノは文字がない文明でも貴重な史料足りうるし、完全に壊したり置き換えたりするのは困難。だからモノを見つめることで、新しい歴史の姿が見えてくるのではないか、というのがコンセプト。

前評判とか一切なしで、本屋さんでたまたまタイトルに引っ張られて手にとって、前書きに書かれたこの本のコンセプト(上で書いたやつね)に引っ張られて買ったんだけどこれが大当たり。有名な書評ブログだと「スゴ本」さんも取り上げているし、Honzでも成毛さんが書いてたりする。ノンフィクション、歴史もの好きには外せない本になっていくのではないかな、と思う。


以下、ベスト10まで。ちなみに「※」マークは「今年の本」を意味していて、前評判抜きだったり新鮮さ・新しさ評価だったりするので少し甘めの順位になってるかも、という意味。

2 科学の栞(朝日新書) ※
3 感性の限界(講談社現代新書) ※
4 旧約聖書を知っていますか(新潮文庫
5 現代素粒子物語(講談社ブルーバックス) ※
6 甲子園が割れた日(新潮文庫
7 鉄道会社はややこしい(光文社新書) ※
8 LIVE講義北朝鮮入門(東洋経済新報社
9 国際秩序(中公新書) ※
10 ものが壊れるわけ(河出書房)


意外と今年出た本が多い。昔の本だと単なる「情報」として以上の付加価値がないと100%楽しめない、というのはあると思う。そういう意味でも本も鮮度が大切なんだよね。今私は就活をしているけれど、本を買うお金に困る人生だけは送りたくない。笑。
2位から5位くらいは一応順位付けしたけれど、ほとんどトントン。6位以降は一応ある程度順位づけの理由があるって感じ。そういう意味では「ベスト5+α」くらいのイメージ。1位はちょっと別格笑。

さて適当にコメント。『科学の栞』は本当は去年末の本なんだけれど(苦笑)、去年まとめ記事を書いてから年末に立ち寄った本屋さんで出会った名著。名著…?実はただの書評集なんだけど、書評集のクセに(失礼)すんごい面白い。前書きの、科学書をはじめとするノンフィクションを読む意味に関する文章に痛く感動して、結局こんな順位に。

『感性の限界』は、新書読みなら見たことがあるであろう「限界」シリーズの完結編。自由意志とか愛とかそういったあたりを大の大人が大まじめに議論する、というのは興味深くもあり、いささか滑稽でもあり。まぁ滑稽なのは高橋先生がコミカルに書いているからだとは思う…思いたい?

旧約聖書を知っていますか』は古い本の中では圧倒的な1位。阿刀田さんの語り口がとにかく絶妙で面白かった。中身というよりは文体の勝利だけれど、文章を好んでもらえるのは物書きとしては最上の喜びなんじゃないですかね。まぁ、すごい癖のある本ではあるので、絶対に人には勧められぬ。

『現代素粒子物語』はヒッグス粒子関連。今年はブルーバックスに限らず良い物理本がたくさん出たのかな。圏外になっちゃったけど『「シュレーディンガーの猫」のパラドックスが解けた!』もよかったし、『これが物理学だ!』も十分楽しめた。タイムリー性と読みやすさの勝利かな。

『甲子園が割れた日』は野球好きな人にオススメできる本。私はリアルタイムで知らない世代だけど、私より1世代上な方々(30歳前後?)は当時を思い出して読むという楽しみ方もできると思う。高校野球の裏を知る、というレベルでも面白かったので、リアルタイム世代はもっと評価するんじゃないかな?

『鉄道会社はややこしい』はまぁ趣味全開の本。ずっと東京に住んでいる関係上地下鉄・乗り入れの話が心当たりありまくりでもうストライクゾーンど真ん中。その代わり後半、東京の地下鉄から離れたところは失速気味。人によって当たり外れの大きな本ですな、当たり前だけど。

『LIVE講義北朝鮮入門』は、ちょうど金正恩体制になろうとしている頃に読んだ本。これ以降けっこう北朝鮮ネタを好んで読むようになる一つのきっかけ。ブログでも書いたけれど、ある種の社会実験なんだよね。それが良いか悪いかは別にして。

『国際秩序』は所謂国際関係論の本だけど、近代ヨーロッパ史の復習にもなる。ナショナリズム的に対中、対韓関係を議論したり、「自主路線!」とか粋がってみたりするのがいかに何も考えてないか、ということがよくわかる。特にまた政権交代して、外交もそれなりに動きそうなので。

『ものが壊れるわけ』はなんかすごい印象に残ってる本。ただ実は中身はあんまり覚えてない。モノを壊れなくすることはできなくて、壊れなさと費用の間のトレードオフであるとか。「工学的」発想みたいなのが伝わってきたということなんだよね。何度も言うけど、中身はホントに覚えてない笑。


さて今年もあと1週間程度。来年ももっと良い本と巡り合えますよう、そして皆様よいお年を。