10月の読書メーターまとめ

今月から本の画像を少し大きくした+月初に読み終えた本が最初に来るようにしてみたよ。


さて、冬期の大学(院)が正式に始まった割には合間を縫って読めていて、夏休み期間と比較してもページ数は2割減らなかったのはちょっと意外。
ナイス数に至っては1.5倍とやや暴発(失礼)気味だ。ただコンスタントに2ナイスくらいつくようになっていて、最高は『ゼロからトースターをつくってみた』の4ナイス。というか、10月分の本についてるのが21ナイスだから、遡りナイスが多かったことになる。


今月のベストだが、結局『100のモノが語る世界の歴史 3』が一番面白かったのだけれど、なんか3冊分刊の3冊目を改めてベストにするのも何なのでやめよう笑。

それを引くと今月のベストはなんだかんだで『甲子園が割れた日』か。野球に興味が全くないよっていう人にはちょっとつらいかもしれないけど。野球ファン、当時をリアルタイムで知っていて印象に残ってるような人、そこらへんは読んで面白いんじゃないかと思う。

万人受けという意味では次点の『ゼロからトースターをつくってみた』と『ゼムクリップから技術の世界が見える』かな。


…実は読みかけの本で『「シュレーディンガーの猫」のパラドックスが解けた!』と『これが物理学だ! マサチューセッツ工科大学「感動」講義』はベストを張りうる、特に後者は読後感によっては今年のベストになりかねないレベルなので、11月は激戦区の予感。


2012年10月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:4210ページ
ナイス数:42ナイス

甲子園が割れた日―松井秀喜5連続敬遠の真実 (新潮文庫)甲子園が割れた日―松井秀喜5連続敬遠の真実 (新潮文庫)感想
これは本当に面白くて一気に読んでしまった。チームスポーツ、しかもチームスポーツ「なのに」1対1の勝負を行う野球という競技をどう捉えるか?ということなんだろう。プロとそれ以外、という対比でなく、社会人野球と高校野球の違いについての考察も面白かった。著者の言うとおり、この話に「正解」はないのだろう。ただ今だから冷静に見ることができるけれど、当時の野球ファンが松井の打球を見れずにがっかりしたのは容易に想像がつく。それにしても明徳の空気はちょっと異常だなぁ。野球留学を問題視するのもわからんでもないと思ってしまう。
読了日:10月1日 著者:中村 計
海賊の世界史〈上〉 (中公文庫)海賊の世界史〈上〉 (中公文庫)感想
海運は歴史の中で(今も)人類の輸送の要。富があればそれを奪う者が現れるのも世の常だ。とはいえ実際の海賊は単純な私欲で動いていただけではないようだ。国家による黙認や宗教的な対立も海賊行為の原動力となっていたことがわかる。国家が本気になって取り締まりを始めればじり貧になるのは避けられない面もある。古い本なので仕方ないけれど(原著は1932年!)せっかく「書に残らないアウトローの歴史」を書くのだから、今流行りの?書物史料に頼らないものにすればもっと面白かったのではないかとも思う。下に期待。
読了日:10月4日 著者:フィリップ ゴス
理科系の文学誌理科系の文学誌感想
私は文学というものが大変苦手であり、特に某大学入試一斉塗り絵試験の小説問題は常に凄惨たる出来であった。特に「○○の気持ちを答えよ」という問題ができない。だがこの「文系」的な読みはできないにしても、その逆である「理系的」な読みなら面白いかもしれない。なるほど確かにこうやってSFや文学を読めれば面白いと思える。言語や進化などといった概念を元に深読みしていく作業は実に知的冒険という感じだ。もう少し有名な題材を使ってほしかったけれど、アラマタ先生にそれを求めるのはお坊さんにコーランの解説を求めるようなものでして…
読了日:10月7日 著者:荒俣 宏
21世紀の歴史――未来の人類から見た世界21世紀の歴史――未来の人類から見た世界感想
なんか奇妙なタイトルの本だが、フランスでは著者の名を冠する政府委員会ができてしまうくらいインパクトが強かったらしい本。過去については、中心都市という地政学的な枠組みと、一貫して自由を求める方向に人類史が動いてきたという見方。やや西洋中心史観のきらいがあるが基本的には納得できる。未来予測については…うーん。比較的過去に対して冷徹な筆致だったのだが、超民主主義の到来について妙に楽観的なのが気になった。超民主主義は本当に「自由」かなぁ。ただこの辺りは訳語、「自由」という言葉のニュアンスの問題かもしれない。
読了日:10月8日 著者:ジャック・アタリ
頭の回転数を上げる45の方法頭の回転数を上げる45の方法感想
ちょっとタイトルや前書きから連想される内容とは違ったが、これはこれで面白い。まだ社会人でないので実感とまではいかないが、「仕事」をする上での心構えのようなものがわかった。大きく3つにまとめると「基礎を大事に」「時間を意識」「能動的に行動、特に思考する」ということかな。学生のうちから応用できそうなこともいくつかあったのでそのあたりは意識してみよう。「守破離」や「基礎を大事に」と「既存のものを疑え(基礎も既存のもの!)」のバランスはいつもこの手の議論で難しいと感じるけれど、そこらへんにはあまり触れられず。
読了日:10月11日 著者:久保 憂希也,芝本 秀徳
100のモノが語る世界の歴史3: 近代への道 (筑摩選書)100のモノが語る世界の歴史3: 近代への道 (筑摩選書)感想
「100モノ」完結編で、今回は近代。といっても中世末期の宗教関連のものから始まるが。相変わらず読んでいるだけで楽しい本である。面白いのは、99が「クレジットカード」で100が「ソーラーランプと充電器」であること。1000年後の人類が20世紀末〜21世紀初頭をどのように捉えるだろう?という疑問に対して一つの答えを示唆すると同時に、ここまで見てきた100個の様々な「モノ」が、当時の人にとってどのような存在であったかを間接的に物語っている。うん、実に良いシリーズであった。
読了日:10月13日 著者:ニール マクレガー
人でなしの経済理論-トレードオフの経済学人でなしの経済理論-トレードオフの経済学感想
経済学の基礎的な考え方にはいろいろあるけれど、その中の1つがこの「トレードオフ」つまりあちらが立てばこちらが立たないということ。あえてその観点から様々な「当然」とされている社会問題を眺めてみると、意外と全然違う絵が見えてくる。経済学をやっていると割と普通な発想が多かったけれども、反発する人は多いだろうな。ただ例えば強硬な反原発を唱える人は少なくともこの視点が欠けているとは思う。もちろん彼らにしてみればこういう考えは「人道にもとる」んだろうけれど、その点全然違う原題を「人でなしの」と訳した山形さんは上手い。
読了日:10月17日 著者:ハロルド・ウィンター
ゼムクリップから技術の世界が見える アイデアが形になるまで (平凡社ライブラリー)ゼムクリップから技術の世界が見える アイデアが形になるまで (平凡社ライブラリー)感想
技術的な可能性、アイディアが製品に反映されるまでの様々な要素を具体例を挙げて説明した本。小さいのは鉛筆、クリップから最後には橋、高層ビルまで。ちょっと古い本(96年)なのでファックスがやたらともてはやされていて時代を感じる。今ならタッチパネルだろうか?高層ビルはエレベータ関連が全面積の30%近くってほんまかいな。クリップの特許ってずいぶん細かいんだなぁ。工学も理学も「理系」だけど、向かっている方向が全然違う。その辺は経済学と法学が「文系」だけどけっこう空気が違うのと同じものを感じる(やや脱線気味)
読了日:10月18日 著者:ヘンリー・ペトロスキー
ゼロからトースターを作ってみたゼロからトースターを作ってみた感想
イギリスの工学系の大学院生が、文字通り自らの手で原料調達から何からしてトースターをつくろうという。プロジェクトXの亜種みたいな本。当初の目標と比べるとずいぶん穏健な?ところに落ち着くけれど、読めばそれも仕方なしと思える。意外と金属を作るのが楽で、確かに人類は石器の後青銅器時代を経験しているのだから当り前か。銅が一番無難に作れていたし。著者のまとめは環境問題や現代への警鐘?といった方向だが、個人的には「分業・大量生産すげー」という勢いで読んでいた。手を動かしたならではの感想なのか、工学的な見方なのか。
読了日:10月21日 著者:トーマス・トウェイツ
海賊の世界史〈下〉 (中公文庫)海賊の世界史〈下〉 (中公文庫)感想
下巻は北米からアフリカ、中東、アジアまで…と書くと広い。特に下巻で印象に残ったのは、様々なキャプテンの最期、処刑される場面。あくまで自分の正しさを主張したり、ここにきて急に大人しくなったり、ふがいない仲間を罵ってみたり。日本の武士には「辞世の句」という、正に切腹=死ぬ間際に残す言葉というのがあるけれど、実は一番個性が出るタイミングなのかもしれない。それ以外だと女性海賊の意外な活躍が目立った。当時の世相を考えると、男性以上に、一度関与してしまったら引くに引けない、という事情はあったかも。
読了日:10月23日 著者:フィリップ ゴス
経済学に何ができるか - 文明社会の制度的枠組み (中公新書)経済学に何ができるか - 文明社会の制度的枠組み (中公新書)感想
やや思想史的な観点から、現在経済学が絡んでいる問題と、それに対する見方をまとめた本。連載が元なのでややぶつ切り感があるが、「価値判断まで経済学が絡まないように」という主張で一本通っている(と書いてある)。個々の話は面白く、ルーマニア独身税、消費者主権はどこまで本当か、などなど。どこかで聞いたような話を経済学とその周辺の思想で整理する、という試み自体は思想肌の人も経済肌の人も等しく楽しめる。結局全体の結論がなんだったのか、はいま一つ伝わってこない。エッセイ集と思えば、十分アリ。
読了日:10月25日 著者:猪木 武徳
盲目の時計職人盲目の時計職人感想
ドーキンスと言えば『利己的な遺伝子』だけど、これも面白い。進化論に対する様々な誤解を解きつつ、その「普遍性」を示していく。タイトルが初見よくわからないけれど、最初の方を読めばなるほどと思える。結局のところ生物の進化が人間の時間スケールだと実感できないことが様々な誤解に繋がっているんだろうなと感じた。原著がやや古いのでコンピュータを使った研究は進んでいなかったようだけれど、例えばバイオモルフなんかも今やればもっと綿密なのができそう。それはそれで、生物のモデル化に対する批判みたいなのが出そうだけど。笑。
読了日:10月26日 著者:リチャード・ドーキンス
カップヌードルをぶっつぶせ!―創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀 (中公文庫)カップヌードルをぶっつぶせ!―創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀 (中公文庫)感想
カップヌードル開発秘話は「プロジェクトX」でも大人気だったけれど、その後の日清を支えたのは何か?というお話。もちろんカップヌードルは偉大な発明、主力商品だけれど、それだけではダメだと。読んだ限りでは創業者はあくまで「一発屋」で、「創業者は天才」というのと少し違う印象だった。そういう意味でも2代目の苦労とセンスが伝わってくる。業界内の競争、会社内の競争をどう行うかが鍵だということ。日本人は競争嫌い、という話もあったけれど、そうも言ってられない。全体的に食品業の特殊性をどう使うか、が裏テーマだった印象。
読了日:10月27日 著者:安藤 宏基
世界を騙しつづける科学者たち〈上〉世界を騙しつづける科学者たち〈上〉感想
温暖化、酸性雨などの分野で、主に政治的思想から科学的事実を恣意的に曲げて主張し続けた(る?)科学者たちの姿を糾弾する本。反共産主義的な思想が、環境問題の存在を認める→市場に対する介入が必要になる→社会主義への一歩だ!と暴走しているのか。ここで批判されている科学者たちは既に、(論争当時)第一線から引いている人たち。そういう意味でも科学の啓蒙・普及活動って難しい。本気で研究している人より時間がとれ、声が大きくなるんだ。「御用学者」は一時期原発関連で流行ったけれど、原発問題でどっちが「御用」チックかというと…
読了日:10月29日 著者:ナオミ オレスケス,エリック・M. コンウェイ

読書メーター